運転教習所編
2015年2月28日、教習所への第一歩


場所は桑園(そうえん)自動車学校の受付カウンター。その日は外気温も低く、雪がちらつく薄曇りの朝。僕は「普通二輪・大型二輪コース」の申込み用紙を差し出しながら、「よし、来週から頑張るぞ」と、ちょっとだけ気合いを入れていた。
なにせ、4月中旬にはスペイン→ギリシャ→トルコ→ドバイの40日間旅行が待っている。さらに「ギリシャのロドス島をバイクで一周する」という新たな野望まで思いついてしまったのだ。そのためには、何があっても旅までに免許を取得しなければならない。――やるしかない、そう腹をくくった。
教習所初日、目立ちすぎるヘルメット

教習所初日、当然だがKTMの派手なヘルメットを持参。しかし、マイヘルメットを持ち込んでいるのは、すでに原付やバイクの免許を持っている者ばかり。自分が浮いていることに気づいたが、もはや後戻りはできない。
予想外の教習トラブル
世の中そう簡単にはいかない。教習初日から問題が噴出した。
1. 肩が痛い問題
少し前にジムで痛めた肩が完治しておらず、動かすたびにズキリと痛む。案の定、初回レッスンで「バイクを起こす練習」がやってきた。事前に教官に「肩痛めてるんで無理です!」と伝えていたはずなのに、目の前で華奢な女子がひょいとバイクを起こしてしまう。
「ほら、あの子もできてるんだから、やってみましょう」
そんな気軽なノリで振られて断れず、結局、肩をさらに悪化させることに。
それも初日からである、帰りの駐車場で車の窓から駐車券を入れようとすると肩が痛む。
全治が三か月以上伸びたか・・・
2. バイクが小さい問題

教習車はCB400SFやNC750。が、身長190センチ超の僕が乗ると、まるで原付に見えてしまう。
ステップが狭すぎて足首が窮屈、気を抜けば勝手にニュートラルに入ってしまう始末。
スラローム中にギアがNへ抜けると焦るやら恥ずかしいやら。教官に訴えても「そんなことある? 慣れでしょ」と笑われるだけ。
3. 余計なアドバイス問題
これまた難儀なことに、運転が苦手な同受講者が親切心(?)で、あれこれとアドバイスをくれる。
「一本橋は超むずいっすよ」「スラロームも難しいですよねぇ」
ネガティブな刷り込みのせいか、最初の一本橋は失敗ばかり。そんなはずはない・・・
ところが休憩後、脳内リセットした2コマ目ではあっさり成功する。
そもそもやったことないんだから簡単か難しいかなんて分からない。
もしかしたら得意かもしれない、やる前にネガティブな刷り込みなんかいらないのだ。

下手くそな人の体験談は諸刃の剣だと実感した。
上手な人に簡単だよって言われたほうがはるかにマシなんだな。
まずやってみて、それからアドバイスを聞いたほうが良いな、先生の話で十分である(あくまでも俺の場合)。
1か月で教習完走、そして免許取得
そんなこんなで肩の痛み、小型バイク(?)の窮屈さ、迷惑なアドバイスに耐えながら、手がカジカむとエンジンを触り、約1か月で教習を完走。予定通り3月末に卒業検定をクリア。
勢いそのままに、北海道・手稲の運転免許試験場へ駆け込み、無事に大型二輪免許をゲット。さらに同時に国際免許証の申請まで済ませた。
「えっ? まだ国内も走ってないのにいきなり海外で乗る気か?」
そう言いたくなる気持ちはわかる。しかし、旅で行くスペインやギリシャ、トルコでバイクを借りられるチャンスがあったら? 旅好きの性(さが)としては、その可能性をつぶしておく手はない。

国際免許取得と新たな冒険へ
国際免許の取得は至ってシンプル。証明写真とパスポート、手数料3000円を窓口に出せば、ささっと発行してもらえる。
こうして、2015年4月3日。肩の痛みに耐え、雪降る屋上教習所で四苦八苦した日々が報われ、僕は堂々と「大型二輪免許所持者」となる。
今やKTM1190ADVENTURE Rとの再会を、胸を張って待ち望めるようになった。
走り出せ、まだ見ぬ世界へ(いや国内も走ってないだろ)
とはいえ、実際に公道でバイクに慣れる前に、僕はしれっと海外へ飛び立ってしまう。

スペイン、ギリシャ、トルコ、そしてドバイ……。
そのどこかで二輪が僕を待っているかもしれない。ロドス島の海沿いをバイクで一周するのかも。計画に無茶が多い気もするが、それが旅とバイクの醍醐味だ。
次回予告
次回はいよいよ「実際にKTM1190に跨がってみた編」へと駒を進めたい。
免許取り立てホヤホヤ、ろくに国内を走ることなく海外へ。
無謀な冒険の扉は、すでに大きく開いている。